日本を含め、世界中で多様性に関する概念が浸透しつつあります。
誰もが暮らしやすい社会を作るために、役目を果たしているアイディアのひとつがユニバーサルデザインです。
今回は、ユニバーサルデザインにスポットを当てて、概要や7つの原則を詳しく解説します。
ユニバーサルデザインとは
ユニバーサルデザインの「ユニバーサル」とは、「普遍的な」という意味をもつ英語です。
つまり、身体能力や年齢、性別、国籍など様々な理由を問わず、誰もが使いやすく作られたデザインのことをユニバーサルデザインといいます。
ユニバーサルデザインは、工業製品や建物の構造などだけでなく、システム全般や環境自体を表すことも少なくありません。
ユニバーサルデザインである証として、頭文字を使った「UD」と表記されるケースもあります。
バリアフリーとの違い
ユニバーサルデザインとよく似た言葉として「バリアフリー」を思い浮かべる人も多いでしょう。
バリアフリーの「バリア」は障壁を表す言葉であり、高齢者や障害をもつ人が暮らしやすくするためのデザインを意味しています。
ユニバーサルデザインは、「障壁」や「障害」といった前提がありません。
ユニバーサルデザインの7つの原則
ユニバーサルデザインを広く浸透させるために、意識するべき7つのポイントがあります。
続いては、ユニバーサルデザインの7つの原則について詳しく紐解いていきましょう。
1. 公平性
ユニバーサルデザインは、身体的、心理的問わず、誰もが同じように使えるデザインであることが大切です。
例えば、よくあるユニバーサルデザインとして「自動ドア」が挙げられます。
自動ドアは、歩行者に限らず、車椅子に乗っている人やベビーカーを押している人でも、スムーズに出入りできる手段です。
2. 自由度
利用者の状況や嗜好に合わせて、自由に使い方を選ぶことが可能なデザインも、ユニバーサルデザインのひとつです。
行くある例として「多機能トイレ」が挙げられるでしょう。
車椅子や杖をついている人だけでなく、どんな人でも利用できるのが特徴です。
また、階段やエレベーター、エスカレーターが併設されている建物も状況によって昇降手段を選べるためユニバーサルデザインに該当します。
3. 単純性
ユニバーサルデザインを謳うためには、複雑な機能が備わっていてはいけません。誰でも見ただけで使い方がわかることが大切で、シャンプーやリンスのボトルもそのひとつです。
一般的に、シャンプーやリンスのボトルには、凸凹が設けられています。これは、触っただけでどちらがシャンプーか認識できるための配慮です。
4. 明確であること
例えば、電車の案内板を見ると、日本語だけでなく英語や点字、ひらがななど、様々な言語が使用されています。
これもユニバーサルデザインのひとつで、言語の理解度に関係なく、誰でも情報が得られる仕組みです。
5. 安全性
どんな状況でも事故や怪我を心配することなく、安全に使用できるデザインもユニバーサルデザインです。
例えば、危険防止機能が備わった家電が挙げられるでしょう。
電子レンジであれば、温めている最中に扉を開けると止まるように作られています。
そのほか、ATMの操作でよく見られる「戻る」というボタンは、万が一失敗しても安心して使える仕組みです。
6. 体に対して負担が少ない
少ないパワーで使えるうえに、無理な体勢を取る必要がないデザインもユニバーサルデザインの原則として挙げられます。
例えば、水道のレバーは、子供でも簡単に開閉できる仕組みです。
そのほか、レバーを上げ下げするだけで使えるドアのハンドルも同様に負担がかかりません。
7. 十分な空間がある
「優先駐車スペース」や「多機能トイレ」に代表されるデザインは、車椅子に乗っている人でも十分なスペースが確保されているため、使いやすくなっています。
また、近年の主流となっている電気のスイッチも、手のひら全体を使って操作できるため、どんな状況でも使いやすいでしょう。
参照:ユニバーサル・デザインの原則|NISE(独立行政法人国立特殊教育綜合研究所)
ユニバーサルデザインの今後
すでに、ユニバーサルデザインは各所で多く見られるようになっています。
アイテムや空間だけでなく、タクシーやバスなど公共交通機関でもUD仕様の車両を見かけるでしょう。
さらなる展開として、「UDシティ」という概念も登場しています。つまり、都市全体がユニバーサルデザインになっている状況です。
単純に、段差が少ない街というだけではなく、ICTやAIといったテクノロジーを駆使した概念で、実用化に向けた動きが始まっています。
参照:UDシティ | ユニバーサルデザイン:ユニバーサルデザインがひらくこれからの都市ビジョン | 技術とサービス | 鹿島建設株式会社
まとめ
ユニバーサルデザインは、利用する人の意見やアイディアを取り入れながら、変化していくものです。
普段使用している製品の中にも、ユニバーサルデザインが導入されたものも多いでしょう。
ちょっと視点を変えるだけで、ユニバーサルデザインの魅力を知ることができます。
製品だけでなく、空間や街全体がより暮らしやすくなるように、日頃から使い勝手を意識してみましょう。